発注者が知っておきたい!システム開発契約における準委任と請負の違い

こんにちは!マーケティング部の田中です。今回のブログでは、システム開発における準委任契約・請負契約の基本的な概要や各契約の違い、メリットデメリット、どちらを契約すべきかなどについてご説明いたします。

準委任契約とは

準委任契約とは、「委任者(発注側)が受任者(受注側)に対して、*法律行為以外の事務を委任する契約」のことです。準委任契約においては、受任者(受注側)は委任者(発注側)の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理しなければなりません。(民法644条より)一方、受任者(受注側)は業務を完成する義務はありませんので、原則*契約不適合責任はありません。イメージは、決められた期間内で、完成義務を負わずに業務を支援をしたり、代わりに業務を行ったりするなどです。

*法律行為とは、ある行為を行うことで、法的な義務や権利が発生したり、消滅してしまう行為のことを指します。

*契約不適合責任とは、欠陥品(傷物)を販売・製造したときに負うことになる責任のことを指します。

請負契約とは

請負契約とは、「委任者(発注側)が受任者(受注側)に対して、業務を完成・納品することを約束させ、その完成物の対価として報酬を支払う契約」のことです。請負契約においては、受任者(受注側)は業務を完成する義務があるため、契約不適合責任を負います。ただし、指揮命令権は受任者(受注側)にあるため、委任者(発注側)で指揮・監督することは出来ません。

準委任契約・請負契約の違い

前述の通り、準委任契約と請負契約には違いがありますが、ここでは主に4つのポイントに絞って説明します。

目的 準委任契約では「法律以外の事務作業を遂行すること」を目的とし、請負契約では「業務を完成・納品すること」を目的としています。
義務&成果物 準委任契約では「善管注意義務=一般的・客観的に当然求められる注意を払うこと」を義務とし、請負契約では「契約不適合責任=完成物に欠陥があった場合に責任を負うこと」を義務とします。
また、準委任契約では「原則成果物の提出は不要」ですが、請負契約では「原則成果物の提出は必要」です。
報酬準委任契約では「成果物のありなしに関わらず、業務が遂行されたこと」に対して報酬が支払われるのに対し、請負契約では「完成した成果物」に対して報酬が支払われます。
再委託、下請け 委任者(発注側)と受任者(受注側)との契約内容にもよりますが、準委任契約では「原則再委託は不可」ですが、請負契約では「原則下請けに依頼することが可能」です。

準委任契約のメリット・デメリット

(1)メリット

契約後に仕様変更が可能

準委任契約では、請負契約と違い、開発中に発生する仕様変更に対して、柔軟に対応してもらえます。そのため、契約前にそこまで仕様をしっかり決めておく必要はありません。

見積金額が高くなりにくい

準委任契約では、受任者(受注側)は成果物の提出や契約不適合責任を負わないため、契約時に仕様があまり明確になっていなくても見積金額が高額になりません。また、仕様変更にも柔軟に対応してもらえるので、追加費用も抑えられます。

エンジニアを効率よく確保出来る

準委任契約では、契約内容・時期などに合わせて、必要な人材のみを効率よく確保することができます。

(2)デメリット

契約内容が曖昧になる

準委任契約では、業務を完成することを目的としておらず、業務を遂行することを目的としているため、契約内容が曖昧になりがちです。また、契約内容が曖昧になると、両者間が考える成果物にも認識の違いが発生する可能性があります。

開発業務に遅れが発生する可能性がある

準委任契約は、上述の通り、「法律以外の事務作業を遂行すること」を目的としているため、納期通りに成果物が完成しない可能性があります。また、受任者(受注者)の進捗管理スキルによって、スケジュールに遅れが発生してしまうかもしれません。

請負契約のメリット・デメリット

(1)メリット

開発費用が事前に明確になる

請負契約では、新たな仕様変更がない限り、見積金額に変更がないため、あらかじめ開発費用が分かります。

成果物の認識違いが発生しにくい

請負契約では、基本的に成果物や納期について両者間で決定したうえで契約するため、成果物が仕様と異なる可能性が低いです。また、受任者(受注側)は、契約不適合責任があるため、より要件に近い成果物となるでしょう。

開発業務の進捗管理が不要

請負契約では、指揮命令権が受任者(受注側)にあるため、委任者(発注側)の進捗管理業務は不要となります。

(2)デメリット

契約後に仕様変更が難しい

上述の通り、基本的に成果物や納期について両者間で決定したうえで契約するため、契約後の仕様変更は出来ません。また、仕様変更する場合は追加費用がかかるため、契約前に必ず仕様について慎重に検討することが望ましいでしょう。

見積金額が高くなりやすい

受任者(受注側)は委任者(発注側)に提示した見積金額で、決められた納期・成果物を遂行する必要があるため、見積提出段階で金額が高くなってしまいます。また、見積時に仕様がしっかり決まってない場合は、より金額は高くなります。

契約する際に注意するポイント

準委任契約

準委任契約においては、事務作業を遂行することを目的としているため、善管注意義務が全うされているかを客観的に判断できるよう、求める品質保証を明確にする、一定の成果物(例えば定期的なレポート)を納品してもらうなどの工夫が必要です。また、受任者(受注側)の進捗管理スキルを確認するため、事前に進捗管理方法や開発体制を確認することをおすすめします。

請負契約

請負契約においては、基本的に契約後の仕様変更は難しいため、契約前に目的や仕様、成果物の内容を決定する必要があります。また、万が一仕様変更が発生した場合の対応についても、契約前に両者間で協議し、契約に明記することが望ましいです。

準委任契約・請負契約どちらで契約すべきか

準委任契約では、やはり事前に仕様を決めることが難しい開発業務、柔軟に対応することが求められる開発業務などに良いでしょう。例えば、テスト業務が必要な開発業務は仕様変更が当たり前なので、準委任契約との相性が良いです。

反対に請負契約では、事前に仕様を決めることができる開発業務、比較的簡単な開発業務などに良いでしょう。例えば、ホームページの作成や定型化されている業務などは仕様変更の発生が少ないため、請負契約に合っていると言えます。

まとめ

システム開発を外部に委託するにあたって、事前に契約形態を把握することは、外部委託を成功させる上での第一歩と言えますが、今回のブログはいかがでしたでしょうか。

上述の通り、準委任契約と請負契約はどちらも一長一短あります。また、開発業務の内容によっても合う合わないがあるため、どちらが良いか慎重に検討していく必要があります。しかしながら、事前に仕様をしっかり決めていたとしても、多くの開発業務は少なからず仕様変更が発生する可能性があります。そのため、一部は請負契約にして仕様変更がありそうな開発業務は準委任契約にする、迷った場合はまず準委任契約にするなどで検討してみましょう。

長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

システム開発の外部委託をご検討中の方は、ぜひ当社までお問い合わせください。