現役ブリッジエンジニアが語ります!オフショア開発を成功させるためのポイント

はじめに

こんにちは!BrSE(ブリッジエンジニア)のフォンです。

当社では、アジャイル開発を取り入れたオフショア開発の活用を推進しています。オフショア開発にまつわるお役に立つ内容を定期的にお届けします。

今回ブログでは、オフショア開発を成功させるためのポイントについてご紹介いたします。オフショア開発においてどのような課題が存在し、その課題に対する対策を解説していきます。

オフショア開発の課題はコミュニケーション力

近年日本国内のIT人材が不足している中、海外の企業やリソースを活用して行う委託開発「オフショア開発」が広く知られています。

しかし私がこれまで関わってきたお客さんの多くは、初めて検討する際にたくさんの不安や疑問を抱えています。例えば言語の壁、納期、コスト、開発ノウハウの蓄積、品質担保といった様々な面で課題が浮かび上がります。こうした状況の中でせっかく興味があっても、躊躇する企業も多いのではないでしょうか。

なぜオフショア開発のプロジェクトが失敗するのか、その理由を探っていきたいと思います。日本の発注者がオフショア開発企業に感じている課題について、オフショア白書(2022年版)※1のランキングは以下のように掲載されています。

1位)コミュニケーション力

2位)品質管理

今回の記事ではコミュニケーション力の課題に焦点を当て解説していきたいと思います。

コミュニケーション力は日本語の問題?

コミュニケーション力に関する課題といえば、言語の壁を想像することが多いのではないでしょうか。

オフショア開発現場では、基本的に日本語が使用されることが多いため、オフショア開発企業は必ず日本語がわかる人材をアサインします。日本語がわかる人材といえば、コミュニケータ(comtor)やブリッジエンジニア(BrSE)のことを指します。コミュニケータはプログラミングといった技術面でのスキルはなく、通訳や翻訳がメインの業務となります。逆に技術と言語の両方のスキルを持つ人材はブリッジエンジニアです。実際に通訳や翻訳の業務だけではなく、進捗管理や提案といったプロジェクトマネージャーの業務まで担当するといったケースが多いです。

しかし担当者によっては日本語能力やマネジメント能力が低いことがあります。仕様のキャッチアップがうまく行かず、コミュニケーションコストが増えてしまいます。コミュニケーションのボトルネックが生じた場合、開発の品質にも影響を与える結果につながります。

異文化マネジメント

コミュニケーション力が課題と懸念される理由は、単に日本語人材の言語理解力だけの原因ではありません。その理由は、開発のプロジェクトが複数の役割のメンバーで構成されるからです。

例えば技術調査、開発、テストなど多くの工程はオフショア開発サイドのエンジニアが担当しています。発注企業からの依頼に対し、現地のエンジニアに協力してもらえないとうまくいきません。タスクの重要度や緊急度がうまく伝わらず、行き違いが生じる可能性が高いです。そうすると、発注元の日本企業とブリッジエンジニアの話だけではなく、オフショア開発サイドのメンバーを含めて、チーム全体の理解が重要なポイントとなります。

ビジネス場面でも、国や地域によって文化的マインドセットやビジネス習慣が異なります。特にグローバルプロジェクトにおいては異文化理解力が求められます。ここで「カルチャーマップ」※2をご紹介したいと思います。

今回のブログは全ての指標の詳細説明を省略します。ご興味ありましたら、ぜひ書籍をご確認ください。

出典:https://www.mdttraining.vn/post/on-our-bookshelf-the-cultural-map-by-erin-meyer

 発注元である日本企業と海外開発拠点のベトナム企業を比較するために、日本とベトナムの線を見てみてください。いくつかの指標では、両国の分類は同じです。

日本人もベトナム人も直接的なネガティブ・フィードバックやオープンな反論は不快に感じます。一方、決断やスケジュールの指標をよく見ると、大きな違いがあるとわかります。日本では、決断の多くはボトムアップ式で行われます。対照的に、ベトナムではほとんどの場合上司によってトップダウン式で行われます。また日本は直線的な時間できちんとスケジュールを守りますが、ベトナムは柔軟に時間を調整します。

ハイコンテクスト文化同士の課題

今回取り上げるコミュニケーション力の課題と「カルチャーマップ」はどのように関連しているのでしょうか。実は多文化間のチームでは、同じハイコンテクスト文化出身者同士の間で行き違いが生じやすい環境です。

カルチャーマップに記載する概念を簡単に説明します。

ハイコンテクストとは、暗黙の了解(前提となる、知識やカルチャー)が多く、行間を読むようなコミュニケーション方法のこと。

ローコンテクストとは、前提となる、知識やカルチャーの理解がなくても、分かるよう、シンプルで明快なコミュニケーション方法のこと。

日本で「空気を読む」や「KY」などの言葉が流行っています。日本人同士でも「伝えたのに、伝わってないこと」が多いのではないでしょうか。オフショア開発の場合は日本人同士よりも遥かにハードルが高くなります。なぜなら、日本人とベトナム人では、「空気の読み方」が異なるからです。そのため、話し手の意図とは違うメッセージを捉えてしまう可能性があります。

オフショア開発コミュニケーション課題の対策

オフショア開発の課題に対し、私の経験に基づいた対処法を2つ紹介したいと思います。

1つ目は、ローコンテクストなやり取りを行うことをお勧めします。

2つ目は、「話す」だけでなく「聞く」コミュニケーションを心がけます。

ローコンテクストの具体的な実践が「PREP(プレップ)法」でのコミュニケーションです。PREP法は以下の頭文字をとったものです。このフォーマットに従って話を組み立てると、論理的で分かりやすくなります。

P(Point)     結論

R(Reason)    理由

E(Example)  具体例

P(Point)     結論

このような工夫をすることによって口頭のコミュニケーションだけではなく、ドキュメントや文書における場面も役に立てます。日本もベトナムもハイコンテクスト文化ですが、開発現場においてあえてローコンテクストなコミュニケーションを実現してみることはいかがでしょうか。

また「聞く」の対処法としては、確認の質問が効果的なコミュニケーションです。特に話し手が何を言っているかではなく、何を意味しているのかを聞くように意識します。例えばタスクを依頼される際、タスクの内容をまとめて自分の理解を相手に確認してもらいます。こうすることで行き違いを最小限にし、コミュニケーションコストが減少することで生産性も高めることが可能です。

まとめ

今回の記事では、オフショア開発においての課題およびプロジェクトを成功させるためのポイントを解説しました。コミュニケーション力の課題に焦点を当て、原因と対策を述べました。国によって文化的マインドセットやビジネス習慣が異なることを理解した上で、お互いの意思疎通がよりスムーズになります。オフショア開発に限らず、様々な業界でグローバル化が進んできているため、異文化マネジメントの理解が必須になっているのではないかと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

開発のエンジニアリソースのお悩みを抱える方、オフショア開発をご検討中の方は、当社までお問い合わせください。

※1『オフショア開発白書』は株式会社Resorsが毎年発行している調査です。

※2 カルチャーマップは、Erin Meyer氏の『The Culture Map』日本では『異文化理解力』で出版されます。